image: B.Sugawara
“昔の彼女がスーツを着てモデルをしてた”
オマエらが話してること
聞いてると、いつだってあくび[1]がでちゃうよ
だけど
ほんとは、まだ
生まれて一度もあくびをしたことがないんだ
オレは退屈なんかしたことないし
眠くなったら、だれかとすぐにベッドの中だからね
東急東横線[2]
祐天寺から渋谷に向かう途中
６月20日、水曜日 午後２時
ふと目が合ったのは
電車の中吊り広告
人材派遣会社[3]の広告で
昔の彼女がスーツを着てモデルをしてた
電車が揺れる。
中吊り広告もゆらゆら。
彼女の笑顔もゆらゆら。
オレのハートゆらゆら。
中目黒 代官山
オレと彼女 見つめ合って 電車の中
気づいたら、オレは 生まれて初めてあくびをしてた
このオレが、あくび
まいるよな
人材派遣をしてるなら
もう少しマシなガールフレンドを
オレの手元に届けて欲しいぜ
これからオレは渋谷で
女の子と待ち合わせ
referenced works
- あくび：眠いとき、疲れているとき、退屈なとき、緊張しているときに、自動的に生ずる深呼吸もしくは顔筋ストレッチ運動。伝染性および共鳴性が高い。 ↩
- 東急東横線：東京の渋谷駅と神奈川の横浜駅を結ぶ鉄道。「お忘れ物検索システム」が駅に導入され、忘れ物をしても発見しやすくなっている。物忘れの検索は無理。 ↩
- 人材派遣会社：必要な場所へ、必要なタイミングで、必要な人材を手配する組織。もう少しマシな人を手配してほしい場合は、チェンジも可能。 ↩
location information
- 場所: 祐天寺
- 時間: 昼
- 緯度: 35.638011
- 経度: 139.69099
- 地図: Google Maps
016 “ポツンと東京を見下ろすその姿は気高く、とても真摯だ。”
015 “光に彩られて先輩の横顔が、綺麗に染まる.。”
014 “悲しくて歩けないという気持ちを初めて知った夜”
013 “私たちの声だけが静かに揺れた”
012 “細くぐるりと指を囲む、日焼けをしていない左手の薬指の根元”
011 “涙を流しながら煙を吐く彼の隣”
010 “幼い耳には雑音にしか聴こえない音楽に興味が湧いた”
009 “今年も蕎麦が食べられるなぁ”
008 “お堀に映った月をみんなで見てる”
007 “バッグの中だけがつめたいまま”
006 “ほぼ満員の客がざわざわと寿司を食らっている”
005 “向かい合って、仁王立ち”
004 “なんでもないたった6畳の白い部屋”
003 “昔の彼女がスーツを着てモデルをしてた”
002 “電車が悪いんです”
001 “どこで彼女とセックスをするのかは、東京の子供にとっては問題です”
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広い東京の中に、あなたの思い出を刻んでみませんか？ あの日、あの場所で体験した、あの出来事。あなたにとって忘れられない思い出を、短い物語にして送ってください。
commentary