image: C. Palmieri“光に彩られて先輩の横顔が、綺麗に染まる.。”
工場や倉庫が立ち並ぶ界隈。夕日によって素晴らしい景色に染められて夜を迎える。朝が来るまで熟睡していて、朝になるとどこからともなく機械音が聞こえてくる。
年に1度、その界隈の近くの河川敷[1]の夜空は、火薬と火から作られた光で潤う。その恩恵にあずかろうと、たくさんの人が土手に詰めかける。
まだ天高く太陽が居るうちから場所取り[2]をした僕は、集まった仲間の顔を見てほっとする。しこたま買い込んだお酒や肴を広げて、光の登場を、今か今かと待ち受ける。
小気味いい音がして、大きな音ともに大輪の光が、夜空に一瞬の模様を展開。皆、一様に歓声をあげ、拍手をする。
「あー! あれ! 今の見た? すっごく綺麗だったね!」
「えー…。今の見逃したの?」
「何? 今の? あんなの見たことないよ!」
気温や体温とは違う「あたたかさ」が当たりいっぱいに広がり、光に彩られて先輩の横顔が、綺麗に染まる。喜んだり、驚いたり、楽しそうにしている顔の一つひとつ。
無邪気な振舞い。たまらなく素敵だった。
僕のココロに焼き付けられた笑顔は、忘れられない夏の思い出。
光と音が夜空に織りなす魅惑の花は、夏の情緒を感じさせる逸品。
「ビールは美味しいし、花火[3]は綺麗だし、言うことないわ」
「そうっすねぇ。花火見ながらだと最高ですね」
来年もこの笑顔に出会いたいと期待して、手にしたビールを一気に飲み干した。
referenced works
- 河川敷:河川法では、「かせんしき」と濁らずに読む。本来的には堤防も含む土地を指すが、一般的には、堤防と堤防にはさまれた区域で、普段は水が流れておらず、大雨の際にのみ水が流れる岸辺を指す。公園やゴルフ場、野球場などに活用されるほか、バーベキューを楽しむ人々でにぎわうことも。水辺の宿命か、春から夏にかけて最盛期を迎える。最近は、ブルーシートテント敷地としても活用されている。 ↩
- 場所取り:より快適な状況で体験を得るために、好立地を確保する行為。日本においては、花見、花火大会、運動会、祭りなどで場所取りの必要に迫られる。ブルーシートやロープなど、縄張りを主張する強面の道具が用いられる。 ↩
- 花火:爆発による光と音と振動を楽しむために開発されたもの。花火師と呼ばれる煙火打揚従事者によって執り行われる花火大会は、日本の夏の風物詩となっている。日本に伝来したのは、16世紀。以来、咲いては散る夜空の花は、様々な思い出の上に降り注いできた。 ↩
location information
- 場所: 荒川戸田橋緑地
- 時間: 夜
- 緯度: 35.799472
- 経度: 139.663031
- 地図: Google Maps
commentary